精神障害者保健福祉手帳とは?取得方法とメリットを解説
障害者手帳とは3種の手帳を総称した一般的な呼称です。
それぞれ『身体障害者手帳』『療育手帳』『精神障害者保健福祉手帳』の3種類があります。
ここでは『精神障害者保健福祉手帳』の申請方法から取得のメリットを紹介していきます。
もくじ
☆精神障害者保健福祉手帳の取得方法
①取得条件と対象になる方
何らかの精神障害のため、長期にわたり社会生活や日常生活に制約がある方が対象となります。
「何らかの精神障害」とは、全ての精神疾患がある人が対象です。
具体的な疾患を紹介します。
🔹統合失調症
🔹うつ病、躁うつ病などの気分障害
🔹てんかん
🔹薬物依存症やアルコール依存症
🔹高次脳機能障害
🔹発達障害(自閉症、学習障害、注意欠損多動障害等)
🔹その他の精神疾患(ストレス関連障害)
知的障害は『療育手帳』の範囲にになります。
発達障害と知的障害の両方を有する場合は、両方の手帳を受けることができます。
②障害等級で分類
障害等級は1級から3級までで分類されています。
障害の程度として1級が最も重く2級、3級になるにつれ徐々に程度が軽くなるイメージで捉えて問題ありません。
1級 | 精神障害があって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの |
2級 | 精神障害であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの |
3級 | 精神障害であって、日常生活若しくは社会生活が制限を受けるか、又は日常生活若しくは社会生活に制限を加えることを必要とする程度のもの |
障害等級の判定は、『精神疾患の存在の確認』『精神疾患(機能障害)の状態の確認』『能力障害(活動制限)の状態確認』『精神障害の程度の総合判定』という順をおって行なわれます。
それでは、手帳を取得するための申請方法をご紹介します。
③申請方法について
1.申請
居住する市区町村の担当窓口(障害福祉関係窓口)で、精神障害者保健福祉手帳の取得を考えている旨を伝えましょう。
2.提出書類の受け取り
申請に必要な、A.申請書、B.(手帳交付に必要な)所定診断書を受け取ります。
3.診断書作成
主治医に、申請時に受け取ったB.(手帳交付に必要な)所定診断書の作成を依頼します。
注1)初診日から6ヵ月以上の経過が必要です。詳しくは主治医からの説明を聞きましょう。
注2)すでに障害年金を受給されている方は、B.所定診断書が不要になります。詳しくは市町村窓口にてお尋ねください。
4.必要書類一式を担当窓口に提出
A.申請書(必要事項は申請する本人または家族が記入)
B.所定診断書、または精神障害による障害年金受給者証(マイナンバーにより年金受給が確認できる場合は不要)
C.本人の写真(縦4㎝×横3㎝)
注意:手帳に写真が不要の場合は、必須事項ではありません。
※申請は、家族や医療機関関係者等が代理で行うこともできます。(代理申請の場合は委任状と身分証明書が必要)
5.手帳の交付
必要書類を提出すると、各都道府県・政令指定都市の精神保健福祉センターにて審査が行われます。該当する等級が決定後、担当窓口より連絡が入りますので手帳の交付を受けましょう。
市町村によって多少違いますが、申請から交付まで約2ヵ月かかります。
★精神障害者保健福祉手帳の取得後のメリット
精神障害者保健福祉手帳を提示することで様々な公共料金や事業者の割引サービスがあります。また、税金の控除や新たな就労方法への可能性も発見できるかもしれません。
それでは一つずつメリットを説明していきますね。
①公共料金の割引やサービスが受けられる
・公共交通機関の運賃割引
これまで身体障害者手帳と療育手帳に限られるケースの多かった公共交通機関の割引サービスですが、近年は精神障害保健福祉手帳でも割引サービスを適応している事業者も増えてきました。一例をあげるとJALは2018年、ANAは2019年から割引サービスを提供しており、手帳所持者とその介助者1名も割引対象としています。
・NHK放送受信料の割引
障害や世帯の状況により半額割引と全額割引があります。詳しくは下記URLよりチェックください。https://www.nhk.or.jp/faq-corner/2jushinryou/02/02-02-12.html
・博物館や美術館などの公共施設の入場料割引
ディズニーランドやユニバーサルスタジオジャパンにも割引サービスがあります。
利用前に事前に確認しておきましょう。
※ディズニーランドに関しては2021年8月現在、障害者割引チケットは販売中止中です。
他にも医療費の助成制度、福祉手当てや助成、貸付制度の利用、公営住宅の優先入居などお住まいの都道府県や市町村によって住民サービスに違いがあります。市町村窓口にお尋ねください。
外部リンクですが、http://fukushi.webcrow.jp/では精神障害者保健福祉手帳で受けることのできるサービスが各都道府県別でまとめられています。自身のお住まいの都道府県をチェックしてみましょう。
②住民税、所得税の控除がある
障害のある本人が受けることのできる控除
引用:国税庁HPhttps://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/03_2.htm
※この表で障害者は精神障害者保健福祉手帳2、3級
特別障害者は精神障害者保健福祉手帳1級を指します
障害者である親族を扶養している方が受けられる障害者控除
働いている方が、生計を共にする配偶者または扶養する親族が特別障害者と認定されれば、所得税や市民税・県民税の控除を受けることができます。
ご家族の障害等級によって控除額が変わります。
働いている方が会社員であれば、年末調整で提出する「扶養控除等申告書」で申請します。
確定申告の場合は、障害者手帳等の交付を受けた年分以降の確定申告書第一表「障害者控除」の欄に障害者の控除額、第二表にその方の氏名を記入し申請します。
障害者雇用枠での就職
精神障害者保健福祉手帳を取得すると、一般の雇用だけでなく障害者雇用枠での募集にも応募が可能となります。
障害者雇用枠での就職をすると自身の障害に応じた配慮を会社に求めることができたり、職場での周囲の理解が得やすく、通院や治療に配慮してもらえるようになります。
一般就労の後に精神障害者保健福祉手帳を取得された場合でも、自身の勤める会社が障害者雇用枠を設けている場合、雇用形態の変更も相談に応じてくれる可能性があります。
希望される場合は人事担当者に声をかけましょう。
障害者雇用に関しては、障害者雇用促進法に基づいた制度であり、平成30年に精神障害者も対象に加えられました。
すべての民間企業の事業主には、法定雇用率以上の割合で障害者を雇用する義務があります。法定雇用率とは、全従業員の中で雇用する障がい者の割合のことです。
令和3年3月現在の法律では従業員を43.5人以上雇用している事業主は、障害者を1人以上雇用しなければなりません。
積極的に障害をお持ちの方を採用する企業も多くあります。お住まいの地域のハローワークに相談してみましょう。
まとめ
取得するとメリットの多い精神障害者保健福祉手帳をご紹介しました。
公共料金減額のイメージが強い手帳ですが、そのほかにも税金の控除や就労にも活かせることがご理解いただけたと思います。国を挙げてバックアップしてくれる体制が整いつつあります。
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